【コミュニティとインターネットによる減災の未来】第3回国連防災世界会議 パブリックフォーラム3/18 視聴まとめ


2015年3月18日に行われたウェザーニュース主催、【コミュニティとインターネットによる減災の未来】第3回国連防災世界会議 パブリックフォーラム。

(公式HPより)

image

 

 

ニコニコ生放送での映像がYoutubeにもあがっています。(このデジタルアーカイブの早さはさすが。)

情報発信チーム(現 減災インフォ)としても共感する部分が多く、共有したいのですが、本編は約100分と長いため、特に印象に残った部分をほぼ時系列にブログにまとめました。Youtube上でのおおよその時間も付記しましたので、詳細はそちらをご視聴ください。


日時:3月18日(水)10:00-11:30

場所:仙台市民会館大ホール

パネリスト

山下和彦 (NHK報道局ネット報道部 チーフ・プロデューサー)
杉本誠司 (ニワンゴ代表取締役)
堀江貴文 (実業家)

MC&コメンテーター

バシ(ウェザーニューズ取締役)
木島由利香(ウェザーニューズキャスター)


以下は、Youtube視聴からのまとめです。

(00:19:30頃〜)

個人メディアの時代 

10年前、ブログが登場して個人が情報発信する時代になった(堀江)

(c.f. はあちゅうブログを引用。当時18歳の女子大生だったブログが面白くて本にしたりした。彼女は10年かけて有名になった)

☆堀江貴文 (実業家) さん。 以降、(堀江)と敬称略。

(00:22:00頃〜)

NHKはネットをどう活用して、災害を減らしていくか?

NHKには全国に災害を取材する記者がいる。取材した内容をTVやラジオの「放送」だけでなく、インターネットやSNSの公式アカウントで伝えていく必要がある。その必要性に気づいたのは4年前の東日本大震災だった。

ちょうど2011年3月10日、震災の前日のクローズアップ現代で、「インターネットと放送」という番組を放映し、ニコニコ生放送と初コラボしたところだった。

☆山下和彦 (NHK報道局ネット報道部 チーフ・プロデューサー)。以降、(山下)と敬称略。

当時から比べて今はインフラ環境(LTEもなかった)や、ソーシャルメディアの環境(Twitterもユーザー少なく、LINEはなかった)はずいぶん向上したので、新たな防災や減災への使い道はあるのではないか。(山下)

 

(00:25:00頃〜)

震災直後のNHKのサイマル放送

ニコニコ生放送 :前日の番組のつながりではじまった

Ustretam :広島の中学生が始め、ハプニング的に後追いでUstream Japan社とNHKが相談して公式にはじめた。(山下)

当時は放送法で緊急時のみしかできなかった。最近、放送法が変わり、緊急時以外もできるようになった。(杉本)

 

(00:28:00頃〜)

震災直後のニコニコ生放送

当時のコンテンツは被災地の人より被災地外の人への情報共有がメインになっていた。よって、反省とすれば、災害対応ではなかったかもしれない。

但し、(ニコニコは)コメントがのるという特徴で、視聴者が不安感を共有することで不安感を払拭することには貢献できたかもしれない。Twiitter等の方がコンパクトに情報が送れる。当時よりインフラが向上したので、もう少しコンパクトに映像を送出することで貢献できるかもしれないが、映像情報がどこまで求められているいるのかを含め、考える必要がある。(杉本)

☆杉本誠司 (ニワンゴ代表取締役) 以降、(杉本)と敬称略。

 

(00:33:00頃〜)堀江

災害時のインフラ確保の必要性とメディアの役割分担

災害時のネットワークの確保と電源の確保が前提*で、スマフォからのテキスト情報を、誰かがまとめて伝える必要性は高い。

伝える人も、多くの人が目的によって使い分ける必要がある。(災害時、みんなが電話すると輻輳の原因となるので、テキストデータ通信は有効)

-放送:たくさんの人に役立つ情報

-ネット:被災者の個別の情報など

 

(00:36:00頃〜)

普段から使わないものは緊急時には使えない

スマフォをつかったネット避難訓練を日本の全校で実施したらいい。

災害時、今ココ情報をクセにする。デバイスというキーだと、スマフォをまず持つことが重要なのかも。(杉本)

NHKではソーシャル上の情報をウォッチするのは日々行っている。

御岳山の噴火:登っていた人が災害時あれほど発信するのは初めてだったのでは。

ソーシャルメディアをマスメディアの報道に使う場合、必ず投稿者に確認している。注意すべきは、まずその投稿者の身の安全を確保した上で発信してもらうこと、それを元に取材する側はその人の状況を確認することが前提。

視聴者からの投稿窓口も設けて、ニュースなどに活用させてもらうことも多くなってきた。(気象災害系は特に多い。事件、事故もある)

インターネットは集合知

取材記者が及ばないところの情報を寄せてくださるので、新しい報道のスタイルに移行している。(仙山線の事故でも現場の方の投稿がきっかけだった)(山下)

1次情報源はそこにいる人からしか得られない(堀江)

 

(00:43:00頃〜)堀江

1次情報提供者を支えるインフラ強化

ネットワークやバッテリー、電波。

情報は命に関係ないという人がいるが、めちゃくちゃライフライン。

電波帯域は無駄遣いされている。通信以外に使われている電波帯(タクシー無線、など)や広域に届く電波帯を携帯電話用に解放することは役に立つと思う

 

(00:47:00頃〜)杉本 堀江

ネット上のデマの拡散と正しさへの収斂

1億総記者になった時に1億人全員は正しくない?(司会)

今もこれからもデマはある。でも、まじめなテーマであればあるほど正しい情報に収斂する。デマがあるからダメという話をしても仕方がない。道具なので、正しい使い方を身につけ、自分で見極めていく力、経験値をつんでいく必要がある。

マスメディアは整理されて正しそうに見えても間違った情報もある。ネットはそのぶれ幅は大きいということ。正しいの定義が揺らいでいる。ネット時代は自分での判断力が大切。

 

(00:53:00頃〜)山下・堀江

結果誤報? 〜正しくても古くなる過ち

結果誤報というか、災害時には時間の経過により、結果的に誤った情報になることがある。物資不足が充足された後も、情報が古いものが拡散され続けることがある。

ネットでは100%正しいことはできない。8〜9割でも、やらないよりいいのではないか。堀江さんは震災時RTをしすぎて、abuseユーザーと誤解されて、Twitterアカウントをシャットダウンされた(笑)

 

(00:56:00頃〜)堀江・杉本・山下

Bitcoin2.0版? 自律分散ハブネットワークの可能性

自然に自律的にハブができていく。自分で判断してそこに情報を求めにいくのがインターネットのあるべき姿。それとは別に権威あるマスメディアや行政の情報も必要。

将来は自律分散型のしくみ(eg. Bitcoin2.0 のような通貨情報だけでない人と人との関係をネットワークの参加者が誰を信頼するのかをオーソライズするしくみ。

ネットに対する正しい使い方(人同士の信頼関係は嘘をつきつらい)をシステムに組み込んでいるということ。信頼性の高いコミュニティを見つけたり、創ったり、お互いにタグをつけあうのもネットリテラシー、使い方として求められる。

位置情報や通行実績、地図情報等も含めてマッシュアップするのは大きな組織が得意。例えばマッシュアップするのはGoogle、ポータルにして発信するのはYahoo!、生放送はニコニコ、マスメディアはNHKなど。それぞれ得意な大きな組織がネット上の集合知を集めて再分配するしくみができればいい。

 

(1:03:00頃〜)

メディアの情報のオープン性

災害報道においては、情報を抱えていてもしかたない。他の報道スクープとは性格が違うので、すぐに出して協力する必要がある。(山下)

堀江さんはフルオープン(笑)

基本的にネットの使い方としてはフルオープン、考え方が違えば離脱するという考え方。マスメディアはネットのハブを越えた情報を拾い、広域情報としてまとめて伝え、判断は視聴者に任せるという考え方もありでは。(杉本)

災害は利害関係なくひとつになれるテーマ。オープン化を進めるにあたって適しているのかもしれない。(司会)

 

(1:08:00〜)

ネット上の信頼度、信用度とは?

信頼度はフォロワーの数ではない。同じ人でも分野によって信頼度が違う。分野ごとに信頼できる人を格付けする。分野毎に信頼できる人のタイムラインが生成されるような。これはニュースアプリのプロトタイプにも使える話。(堀江)

知らない人についても、日々のネット上の活動が信用を作っていくことが前提。(杉本)

全員が発信しなくても、評価付けしてリコメンドしたり評価をまとめるだけの人がいてもいい。(山下)

 

(1:17:00〜)

ネットと減災の意識とこれから必要なこと 

災害時は、一般ユーザーはテキスト情報でもとにかく送るとか、それをまとめる人が必要かもという話がある。

ウェザーニュースでは、毎年、減災に関する調査を行っている(回答数約3万人)

☆バシ(ウェザーニューズ取締役) 司会

 

ウェザーニュース社の「減災調査2015」アンケートより

image

震災前2010年と比較し2015年調査では、「自治体での連絡」を基準とする人が16%減り、自分で状況を判断する人が15%増えている。

 

image

SNSへの投稿が減災につながると思っている人は7割以上

 

image

必要性はあると思う人が7割を越えているのに、実際に投稿した事がある人は19%と2割以下。ウェザーニュース記者にもいかに投稿してもらうかが課題だけれど、ほんとどの人が役にたつと思っているのに投稿していない。

意外に使っていないのはなぜか? 

自分なんかの情報は役に立たないと思っている可能性はありそうだけど、全然役にたつと思う。たくさんの情報があると、全体が俯瞰できる。防災教育の中で、災害時に自分や他人が生き延びるための発信の必要性を教育する必要がある。特に火災などは情報が生死を分ける。 (堀江)

ユーザーからのSNS情報はマスメディアの役に立っているか?

NHKでは、報道の端緒となる情報として、数年前と比較にならないほど、ソーシャルメディアの重要性は増している。記者がすぐに見る事ができない情報をソーシャルメディアからキャッチするスピードは早くなり(SOLT: リンク後述)、災害報道の幅は広くなる。ソーシャルメディアにもどしどし発信や、マスメディアへの投稿(スクープBOX: リンク後述)も活用してほしい(山下)

(1:27:00〜)

会場質疑

Q: 信頼できる人の格付けはTwitterのリスト機能を活用できないか?

A:それにプラスα。Twitterだけじゃない。分野ごとに信頼できる人をいれておくと災害時にもふだんにも割と正しい情報がはいってくるようになるのではないか?(堀江)

プラットフォームがつながるような信頼情報の機能が必要になってくるかも(司会)


Q: SNSにあげたりするするモチベーションアップ、楽しくするしくみは?

A:  ウェザーニュースのキャッチは「楽しく明るく真剣に」

☆木島由利香(ウェザーニューズキャスター)

マスメディア、新聞はフォーマットが古い。ふだんの生活では政治、事件事故より、エンタメやグルメの方が大切だったりする。それは、歴史があるので、新聞紙面では利権がある。たとえば、ネットアプリでは、10個のうちグルメがひとつで、政治・経済・社会はひとつにまとまっている。災害時は災害がひとつとして目立つようなしくみがマスメディアにも必要なのでは?(堀江)

 

司会まとめ

(1:26:00〜)
社会全体がマスメディアもネットメディアもユーザーの情報からなりたっているというのを、より、いろいろなコンテンツで表現していく。ハードウェア的なインフラ、定期的な訓練などが必要かもしれない。小さなことからみんなでやっていくといいことある!参加してみることが大切ということ。

(1:34:00〜)

国連防災世界会議は10年に1度。ユーザーのパワーをどうやって集めたら機能するプラットフォームができるか?

普段つかっているスマフォなどの景観の中からこうあるべき?を想像しよう。今日の議論が10年後の減災を考えるきっかけになったらよいと思います。(司会)

image

 

関連リンク

●記事:

【国連防災会議】ネットによる減災を考える(河北新報 ブログ 情報ボランティア@仙台 2015/3/18)

●ブログ:

「コミュニティとインターネットによる減災の未来」をライブで見た内容について(個人ブログ itjさん)

●パネリストと関連サービス

【ウェザーニュース

・パネルで使用された 減災調査の出典

 減災調査2015 
   減災調査2012
   減災調査2010

・アプリやSNSを使った防災訓練

   減災訓練2014

 c.f. ソーシャル防災訓練(ヤフー、TwitterJapan、J−WAVE、森ビル主催)

【ニコニコ生放送

NHK

・「スクープBOX」  :NHKに目撃情報を直接知らせる窓口(一般ユーザー用)

image

・「SOLT 」: NHKの報道にソーシャルメディアの声を生かすNHKネット報道部内ソーシャルリスニングチームの解説

追記:この記事をきっかけにNHK SOLTさんの見学とインタビューを行いました↓

「NHK報道局が実践している「ソーシャル・リスニング・チーム」とは?(2015/7/10)

まとめは以上です。



まとめ後記(ひとりごと)
国連防災世界会議ではたくさんのコンテンツがあるはずなのに、デジタルアーカイブがわかりやすくなこいことを残念に思っていた。減災のための取り組みを広めていくには、仙台での会議参加者だけ、マスメディアでの報道頼みではなく、貴重なコンテンツを広く、イベント終了後も継続して知らせる必要があると思っていた。(TEDがスピーチごとにYoutubeがアップされ、SNSでシェアされ、ハッシュタグでまとめられていくように。)

その中で、このフォーラムは、予告段階からニコ生での中継を告知していたばかりではなく、タイムシフト視聴、すばやくYoutubeでのアーカイブ公開がされていて、「コミュニティとインターネットが進める減災」というテーマ通り、ネットユーザーの共感で伝えて行きたいという主催者の意図(?)にも共感し、まとめることにした。

その私たち情報発信チーム(現 減災インフォ)は、全員フルタイムの仕事をもつ少人数のボランティアで知名度も低い。けれど、メンバーはみな、東日本大震災でなんらか、ITやネットの世界での情報/IT支援を経験している。その経験をふまえ、(所属組織の制約なく活動できる私たちならではの取り組みで、)どうしたらみんながネット上で減災につながる情報を入手し、活用できるかを考えて、歩みは遅くても、少しづつ行動している。

リソースが限られる私たちは、もちろん、被災現地に直行するヘリもなければ、取材記者も旅費もなければ、巨大メディアのようにSNSの大海全体をリスニングすることもできない。けれど、広域大規模な災害では、次々流れるメディアからの情報だけでは、支援団体・支援者が活用しにくいということを知っている。よって、発信のターゲットを支援者向けに限定し、災害初期に地域の偏りなく、信頼できる情報からネットでシェアしやすいかたちにどうしたら鮮度よくまとめ、減災につなげられるかを、災害があるたびに試行錯誤、そのたびに学びを繰り返している。

筆者個人としては、官民連携情報メディアとして立ち上がった「助けあいジャパン」を担当していた時、あまりの被災地情報の少なさに、仙台の新聞社「河北新報」のネット事業部さんにお願いし、貴重な被災者からの1次情報だった読者ブログを転載させていただいたり、それをさらにフジテレビ スーパーニュースさんにシリーズ番組化いただき、そのアーカイブをネット掲載させていただいたりと、緊急時だからこそ実現できたオープンなネットとマスメディアの協力の貴重な経験をした。
(関連記事:多メディア時代の震災報道(河北新報ブログ 2011.11.30)

既存メディアとボランティア団体、個人などがネットワークを組み、新しい公共の精神に則った情報ネットワーク(一種のネオジャーナリズム?)が生まれれば、今回の震災がもたらした大きな「成果物」になるではないでしょうか。

当時、河北新報の責任者の方から転載をOKいただいた時のメール返信の1文が、4年経った今も活動を続けるモチベーションとなっている。

そうした背景から、議論の中で出たメディアの特性に応じた分担、協力というテーマはとても共感できた。ぜひ、リソース豊富で発信力の強いメディア企業さんと協力していけたら嬉しい。そのためには、発信内容そのもので信頼度を高める努力が私たちにはまだまだ必要で平時のうちからいかに備え、協力しあえるかを話し合う必要があるだろう。堀江さんの話にでてくるBitcoin2.0的な自律分散的ハブネットワークの信頼指標とは、「ツイッターノミクス」という本の中に出てくる感謝や信頼貨幣「ウッフィー」のようなものかもしれないし、ソーシャルメディアでの影響力指標Kloutで信頼できるソートリーダーのジャンルに☆をつけるようなものかもしれない。

群衆の叡智〜Wisdom of Crowd「みんなの意見は案外正しい」という本が出たのは2004年。

集団において情報を寄せ集めることで、その集団が出す結論は集団の中の個人の誰が考えるよりもよい結論を導くことができるという考え(wikipedia)

インターネットの集合知の大切さは11年前にこの本で整理されてから変わらない。スマフォやSNSの普及やビッグデータ解析の進展は、使い方次第で、より多くの人にその恩恵をもたらしてくれるはず。

「人」=Crowdが中心となる「コミュニティとインターネットによる減災」は、メディア企業も個人も営利を越えてひとつになれるテーマ。

災害は悲しく辛いことばかり。でも、地域やセクターを超えて痛みを減らす努力するプロセスが、20世紀型の経済中心の競争社会を変え、進化するきっかけとなるなら? 

それは、信頼と信用で公益のために協調する21世紀型の社会に進化するための機会=チャンスと考えられるかもしれない。

どうか、「コミュニティとインターネットによる減災」に取り組む人の輪が広がりますように。