災害に関わる「言い伝え」マップを公開しました。


防災に関わる言い伝えMAPイメージ

防災に関わる「言い伝え」MAP

東日本大震災から6年が経ちました。
今年もテレビでは震災を振り返り、現在の被災地の状況を伝える特別番組が放送されていました。

  • 予定通り進まない復興。
  • 復興から取り残された方々へのケア。
  • 未だに続く仮設住宅での暮らし。

あの大災害の傷跡は未だ癒えたとは言えない状況を伝える内容が多かったですが、 今年はそれに加えて「来るべき次の大災害に備えて何をすべきか」というテーマが語られることが多かったように思います。

昨年も熊本地震、北海道の台風に鳥取地震と自然災害の多い一年でした。

「災害を防ぐこと(防災)は難しいけれど、災害を減らすこと(減災)はできる。」 これは減災インフォを始めた思いであり、今でも我々の取り組みの基本となる考えです。 起こってしまった災害をなかったことにはできませんが、そこから教訓や今後発生する災害の被害を減らすための知恵を得て、次の災害に活かしたいと常に考えています。

防災に関わる言い伝え

古来、人々はそのような教訓を「言い伝え」として残してきました。公開から少し時間が経ってしまっているようですが、消防庁が収集・整理した防災に関わる「言い伝え」 なる資料が 全国災害伝承情報:総務省消防庁 のホームページに公開されています。
そこには資料に添えて次のように記されています。

有史以来、全国で発生した災害は各地に多大な被害をもたらし、それらの災害の教訓は各地域において記録としてあるもの、図画として残されているもの、あるいは物語、ことわざとして伝承されているものなどがあります。  そのような災害にまつわる資料や情報は、これまで国として整理されず今日にいたっており、その多くが各地域に埋もれたままとなっています。  全国災害伝承情報は、そうした各地域に残る貴重な資料を、国として整理集約し、インターネットを活用し広く一般に公開することを目的としたもので、平成16年度から平成18年度にかけて都道府県や市町村などの協力をいただき、調査を通じて収集した情報を整理集約しました。  この情報を通じて、身近な地域に残されている災害に対する教訓を個々人に認識していただき、防災意識高揚に役立てていただくとともに、防災教育用の教材としての活用が図られることを期待しています。

この資料はなかなか興味深い資料で、全国の災害・防災に関する800弱もの言い伝えが一覧でまとめられています。 各言い伝えごとにそれが伝わる自治体名が記されており、地図上にマッピングしてみました。なお、統廃合により自治体が消滅しているものは引き継がれた現在の自治体にマッピングして旧名を併記しています。

防災に関わる「言い伝え」MAP

地図化したデータを見てみると伝承の多い地域、少ない地域があります。少ない地域ではもともと言い伝えが少なかったのかそれとも、伝承が途絶え収集できなかったのかはわかりませんが、 伝承の多い地域は、古くから多くの災害に見舞われてきた結果、地域の知恵として言い伝えが受け継がれてきたということなのでしょう。

個々の地域を見ていくと、言い伝えの内容からどのような災害に苦しんできたのかが想像できます。水害に関する言い伝えが多い地域は水害に、地震に関する言い伝えが多ければ地震に苦しめられることが多かったのでしょう。

例えば栃木県には地名に関する言い伝えが多く伝わっています。古い地名を見るとその土地でよく起こった災害がわかるようです。

言い伝えの類似性に目を向けると「地震が来たら竹やぶに逃げろ」に類する言い伝えは、全国的に多いと気づきます。竹の根が地盤を強固にし地割れを防ぐことができると知られていたと思われます。

また、次のような言い伝えもあります。

  • 地震のとき「マンダラッコ、マンダラッコ」と唱えるとよい。(神奈川県平塚市)
  • 地震のとき「マンザイロク、マンザイロク」といって、竹やぶに逃げる。(新潟県新潟市)
  • 地震のときは「まんぜえろく」と唱える。(埼玉県毛呂山町)

一説によると「まんぜいろく」とは「万歳禄」と書き、末永く神の恩恵を受けられますように、という祈願らしいです。一見、つながりなさそうな地域で同じような言葉が言い伝えられているのも興味深く昔は互いに交流があったのだろうか?と想像されます。

このように眺めているだけでなかなかおもしろい資料です。

なお、防災に関わる「言い伝え」MAP はスマートフォンでも見ることができます。一度表示すると背景地図以外はオフラインでも表示できるので電波が悪いところでも参照できます。

スキマ時間の暇つぶしにでもぜひ見てみてください。防災に関して思わぬ発見があるかもしれません。


2017/4/9追記

多くの方にシェアいただき、ありがとうございます。
「この地域のデータがないのはなぜ?」というコメントを多くいただいていますが、このマップは全国災害伝承情報:総務省消防庁 のホームページの防災に関わる「言い伝え」の情報をそのまま可視化しています。情報の空白はその地域で、何らかの理由で情報が集められなかった、または情報がなかったと推測されます。

「言い伝え」を見つけたら?

減災インフォでは、今後、他出典の情報も追加していければと考えています。
この地域には、こんな災害・防災に関する言い伝えがある、そうした情報が掲載されている文献をご存知の方は、ぜひ以下のフォームよりご連絡ください。

★ 防災に関する「言い伝え」見つけたよ!情報提供フォーム

 その他 お問い合わせ・ご意見

「津波てんでんこ」

東日本大震災では、自らは無事でも、家族の安否を確認するために海岸へ近づき、津波に飲まれた方が多数いることが検証され始めています。

自分の住む地域の言い伝えに興味を持つ。
家族や友人と話し、お年寄りに聞いたり、図書館や郷土資料を探してみる。

このマップが、「自分ごと」で災害時に命を守る行動のきっかけとなりますよう。